このノートの調べ方
2026年10月16日に、1人1台端末が入った2021年以降の実践を中心に調べました。対象は、スポーツ庁と文部科学省の資料、教育委員会と教育センターの研究報告、J-STAGEの論文、大学院の修士論文の要旨です。載せた資料は、リンク先が開けて本文か書誌を確かめたものだけです。資料の番号[1]から[20]は、いちばん下の一覧と対応しています。
1 この単元で大事にしたこと
- キャッチありの3人対3人で、3回でつないで返すゲームにしました。3人制と3回で返すきまりは、調べた資料の多くに共通していました[9][11][14][15]。一人ひとりの役わり(うける・つなぐ・かえす)がはっきりします。
- チームを4人にして、コートに出ない1人を記録係にしました。体育で端末を使わない理由の上位に「運動量が減る」があります[3]。端末を持つのはコートの外の1人だけにして、その1人も点が入るたびに交代します。
- 「落ちるところへ動く」を、3つのポイントの中心に置きました。4年生では7割の子が、ボールの落下点に入る動きの目安に届かなかったという報告があります[9]。いちばんつまずく動きなので、第3時をまるごと使います。
- ねらって返す指導は後半に回しました。コースを打ち分けるのは6年生でも難しいという報告があります[9]。前半はラリーが続くことを優先し、ねらう場所は第4時の作戦から扱います[12]。
- 前半はルールを選び、後半は作戦を選ぶ流れにしました。スポーツ庁の単元例と東京都の研究が同じ順番をとっています[3][15]。
2 学習指導要領での位置づけ
中学年のネット型ゲームは、基本的なボール操作と、ボールを操作できる位置に体を移動する動きによって、易しいゲームをすることがねらいです。例示には、ソフトバレーボール、プレルボール、バドミントンやテニス、天大中小などを基にした易しいゲームがあげられています。
運動が苦手な子への配慮の例として、飛んできたボールをキャッチして打つことを認めること、バウンド数を多くしたりキャッチしてラリーを続けたりすることが書かれています。キャッチバレーは、この配慮をクラス全員のルールにしたものです。
出典:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編、第3学年及び第4学年 E ゲーム(解説97〜98ページ)。
なお、スポーツ庁の「指導の手引」は、中学年のネット型を「テニスを基にした易しいゲーム」で作っています[21]。ソフトバレーボールを基にしたゲームは、高学年の側で扱っています。キャッチバレーは、高学年のソフトバレーボールにつながる入口として選びました。
3 易しいゲームの作り方
資料に共通していた点だけを整理しました。数値は資料ごとに違うので、幅で示します。
| 要素 | 資料での扱い | この単元 |
|---|---|---|
| 人数 | 3人制が多く、役わりがはっきりします[9][10][11][14][15]。 | 3人対3人。チームは4人。 |
| さわる回数 | 3人が1回ずつさわって返すと、全員がつなぐ動きにかかわります。中学年は1人2回までにゆるめる例もあります[11][14]。 | 3回で返す。ゆるめる案は第5時の選択肢に入れました。 |
| キャッチ | いちばん多い手立てです。持てる時間を5秒から3秒へ短くしていく例があります[3][10][14][17]。 | 全部の回でキャッチしてよい。持つのは3秒まで。 |
| ワンバウンド | プレルボールに近い形や、苦手な子のための手立てとして使われます[9][14][16]。 | 第5時の選択肢。 |
| コート | バドミントンのコート(縦13.4メートル前後、横6.1メートル)が多いです[9][10][13]。 | バドミントンのコート。 |
| ネットの高さ | 50センチから180センチまで、資料によって大きく違います[9][10][14]。 | 子どもの背より少し高いくらいから始め、クラスで調整します。 |
| ボール | 軽いボールから始め、難しければもっと軽く柔らかいものにします[10][14]。 | ソフトバレーボール。こわがる子には、より軽いボールを選べるようにします。 |
| 試合の時間 | 前半と後半を3分から4分ずつにする時間制です。点数を先に取る形だと授業の中で終わりません[3][13][14]。 | 前半3分、後半3分。とくてん板にタイマーを付けました。 |
| サーブ | 山なりに投げ入れ、受けやすいボールにします[9][14]。 | うしろの線から下から投げ入れる。入らなければやり直しを認めます。 |
4 子どもに示す3つのポイントの根拠
かまえる
ボールの方向に体を向けることは、学習指導要領解説の例示そのものです。説明スライドでは「ひざ、手、おへそ」の合ことばにしました。
落ちるところへ動く
北村ら(2014)は、4年、5年、6年の授業の映像を分析し、4年では7割の子が落下点に入る動きの目安に届かなかったと報告しています[9]。同じ子を追った研究ではありませんが、4年でいちばんつまずく動きと考えてよいと思います。第3時は、高く上げたボールが落ちる場所に印を置いて、その下に入る練習をします。
声を出してつなぐ
文部科学省の指導資料(2010)は、名前を呼んだり「いち、にい、さん」と声をかけたりすると役わりがはっきりすると書いています[14]。神奈川県立体育センターの実践では、1回目を「ひろう」、2回目を「つなぐ」、3回目を「うつ」の3語で示しています[11]。説明スライドの「うける、つなぐ、かえす」は、この形を4年生の言葉にしたものです。
5 1人1台端末の使い方
調べた範囲で確かめられた使い方は、次の6つです。
| 使い方 | 実践の例 | この単元 |
|---|---|---|
| 作戦ボード | 役わりと位置の2つに絞ったカード[1]。コート図と人の印を動かして説明[6]。オンラインのホワイトボードで作戦を選ぶ[2]。 | チーム作戦シートの作戦ボード。丸と矢印と星を動かします。 |
| 記録 | 成功と失敗の回数を記録し、成功率から作戦を選ぶ[3]。ゲームの記録アプリ[4]。 | とくてん板で点数とラリーの回数を数え、チームのスライドに書きます。 |
| 動画の撮影と振り返り | 前の時間の動画を手本にする[1]。審判役が録画し、次の時間に一部を見る[6]。出ていない子が撮る[8]。 | 必要なときだけ。撮るのは記録係です。勝ち負けより「つながったときの動き」を見る、と先に伝えます[1]。 |
| 共同編集 | 共有ノートに一人ひとりが書き、チームでまとめる[8]。 | チーム作戦シートを、チームの全員で編集します。 |
| 学習カード | 学習カードのデータ化と蓄積[1][2][3][8]。 | ふりかえりカード(1人に1つ)。 |
| 事前の説明 | ルールの説明の動画や資料[1][15]。 | 説明スライドと、リンク集の動画。 |
6 運動量を減らさないための注意
- 端末を持つ人を絞ります。東京都の調査では、ボール運動で端末を使う機会を設けていない先生が66パーセントでした。理由は「効果的な使い方が分からない」が63パーセント、「運動量が減る」が37パーセント、「準備が大変」が24パーセントです(複数回答)[3]。この単元では、コートの外の記録係だけが端末を持ちます。
- 作戦ボードは1チーム1台で見ます。1人1台で同じボードを開くと、表示が遅れて話している人の操作が見えない場面があったという報告があります[6]。
- 作戦タイムの前に、一人で考える時間を置きます。話し合いが得意な子や声の大きい子にかたよる課題に対して、先に一人ひとりが考えを持つ手順にした実践があります[2]。説明スライドの作戦タイムでは「まず自分で考えて、順番に言う」にしました。
- 使うこと自体を目的にしません。端末の導入の課題として、使うことが目的になってしまう点があげられています[20]。紙や口頭で済む場面もあるという指摘もあります[1]。
- ていねいに書く作業は紙でもよいです。書く作業は紙と端末を使い分ける必要があった、という報告があります[1]。
7 何を数えるか
小学校の研究で実際に使われていた数え方には、ラリーの回数[12]、ボールを操作しやすい位置に動いて返した回数[12]、3人で相手コートへ返せた割合[13]、アタックの成功率[5]などがありました。
4年生が自分たちで数えられるように、この単元では「点数」と「いちばん長く続いたラリーの回数」の2つにしました。ラリーの回数は、ボールがネットをこえるたびに1回と数えます。ラリーのグラフは、4年の算数の折れ線グラフとつながります。
もう一歩進めるなら、「3回で返せた回数」を数えると、つないで返せた割合がわかります[13]。第6時に記録係の仕事として加えることもできます。
8 評価
記録に残す評価は、1時間に1つの観点までにします。
- 第4時 思考・判断・表現。チームの作戦を、ゲームの様子をもとに考えているか。作戦ボードの記述と発言で見ます。
- 第7時 知識・技能。ボールを落とさずに、味方につなぐ動きができているか。行動観察で見ます。
- 主体的に学習に取り組む態度は、単元を通したふりかえりカードの記述と、準備や片づけの様子で見ます。
評価の観点の文言は、スポーツ庁の指導の手引[21]と千葉県教育委員会の単元例[22]も参考にしました。
9 調べても見つからなかったこと
- 日本教育工学会の論文誌と大会で、小学校のネット型ゲームを扱った論文は見つかりませんでした。関連して確かめられたのは、2018年のバスケットボールの映像視聴の論文1本です[19]。大会の予稿集は、直接は確かめていません。
- 体育科教育学研究と体育学研究で、小学校のネット型と1人1台端末を組み合わせた原著論文は見つかりませんでした。
- 端末を使った効果だけを取り出して比べた研究は、ネット型では見つかりませんでした。報告されている効果は、単元全体の工夫と合わさったものです。
- 「触球数」「攻撃完了率」という名前の指標を使った、2021年以降の小学校の論文は見つかりませんでした。
- 中学年のバドミントンやテニスを基にしたゲームで、端末を使った実践は見つかりませんでした。
資料の一覧
2021年以降の資料には「GIGA後」と付けました。それより前の資料は、教材づくりの考え方として使っています。
- スポーツ庁(2022)「児童生徒の1人1台のICT端末を活用した体育・保健体育授業の事例集」第3章 事例1 小学校第4学年 ネット型ゲーム(ソフトバレーボール)福岡県行橋市立仲津小学校。GIGA後。PDF
- 同事例集 第4章 事例5 小学校第6学年 ネット型(ソフトバレーボール)北海道教育大学附属札幌小学校。GIGA後。PDF
- 東京都教育委員会「令和5年度 教育研究員研究報告書 小学校 体育」第5学年 ソフトバレーボール。GIGA後。PDF
- 藤田育郎(2021)「ボール運動系領域におけるICT機器活用に関する研究(1)ネット型を対象としたゲーム記録アプリケーションの開発」日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回、131。GIGA後。J-STAGE
- 松永青葉(2021)「小学校体育授業におけるネット型ゲームの学習成果の検討 ICTを活用した協同学習モデルを通して」順天堂大学大学院 修士論文 和文抄録。GIGA後。PDF
- 見附市立田井小学校 令和5年度「健康増進・体力向上のための1学校1取組」事例10 5・6年 ソフトバレーボール(新潟県)。GIGA後。PDF
- 東京都小学校体育研究会 ボール運動領域部会 研究のページ。Web
- 小学館「教育技術」指導アイデア 小4「みんなでつなげ!キャッチバレー」(塩見英樹 監修)。GIGA後。Web
- 北村政弘・岡出美則・近藤智靖・内田雄三(2014)「小学校中・高学年におけるネット型ゲームのゲームパフォーマンスに関する達成基準の事例的検討」体育科教育学研究 30(1)、1-16。J-STAGE
- 塙佐敏(2015)「小学校体育において連係プレーの成立を図るためにボール操作の制限を緩和したソフトバレーボールの実践」日本教科教育学会誌 38(2)、91-102。J-STAGE
- 神奈川県立体育センター 平成29年度 長期研修研究報告「役割を理解して全員が参加するボール運動 ネット型ソフトバレーボールの授業」。PDF
- 加藤寛之 東京都教職員研修センター 平成28年度 研修生報告「運動の楽しさを味わい、意欲と技能を高めるゲームの指導の工夫 攻守一体プレイのネット型ゲームの学習を通して」。PDF
- 吉田征人 神奈川県立体育センター 令和元年度 長期研修研究報告「チームワークが高まり集団的技能が向上する体育の授業 ネット型プレルボールによる協同学習を通して」(特別支援学校)。PDF
- 文部科学省(2010)「学校体育実技指導資料 第8集 ゲーム及びボール運動」第3章。いまの学習指導要領の前の資料です。PDF
- スポーツ庁 単元例「ネット型『ソフトバレーボールを基にした簡易化されたゲーム』」(8時間)。公開の年は確かめられませんでした。PDF
- 千葉県教育委員会 中学年 単元例「ネット型ゲーム プレルボール」。PDF
- 石井舞「小学校6年生のソフトバレーボールの戦術学習に関する実践研究」秋田大学大学院 修士論文要旨。PDF
- 山本朋弘・横山誠二(2021)「小学校体育ボール運動でゲームアプリを活用した際の集団での技能向上に関する検討」コンピュータ&エデュケーション 51、70-74(ゴール型)。GIGA後。J-STAGE
- 山本朋弘・坂本博紀(2018)「小学校体育学習でのタブレット端末持ち帰りによる映像視聴の効果」日本教育工学会論文誌 42(Suppl.)、49-52(バスケットボール)。J-STAGE
- 内海久(2023)「体育授業におけるICT導入段階の課題と今後の可能性」体育科教育学研究 39(1)、55-61(高校中心)。GIGA後。J-STAGE
- スポーツ庁「小学校体育(運動領域)指導の手引」ネット型ゲーム「テニスを基にした易しいゲーム」。PDF
- 千葉県教育委員会「新しい体育の展開」中学年 ネット型ゲーム「キャッチバレーボール」。PDF