SCHOOL STOCK
School Stock / 教材研究ノート / 面積
教材研究ノート | 第2回

「広い」って、どうやって決める?

小4算数「面積(広さを調べよう)」の授業を、全国の先行事例を歩きながら考えます。これは"正解の指導案"ではありません。「こう考えたら面白いかも」を集めた、授業づくりのヒント集です。

小4・算数|先行事例 20件超|指導案・ワークシートつき|© School Stock
陣取りゲームの方眼で広さをくらべ、単位の正方形を数える子どものイラスト
「陣取りゲーム」で"数えて比べる"必要感をつくり、「L字型」で"知っている形になおす"考えを引き出す。導入と練り上げが、一本でつながります。
このノートは、先生方の実践の上に立っています。
ここに並べた導入や手立ては、全国の先生・研究会・教育センター・大学附属校・教科書会社の方々が積み上げてこられた実践から学んだものです。参考にした実践には、本文中と末尾に必ず出典と元サイトへのリンクを付けました。指導案の文章をそのまま写すことはしていません(要約と、私自身の言葉で書いています)。敬意を込めて、リンクから原典にあたっていただけたら嬉しいです。

4年生の「面積」。子どもはもう、「広い・せまい」を毎日感じています。運動場は広い、下じきはせまい。ところが「どれだけ広いか」を数で言おうとすると、とたんに手が止まります。長さはものさしで測れる。では、広さは何で測るのか。この時間のいちばん面白いところは、「広さを数にする」その第一歩を、子ども自身にたどらせるところにあります。

この記事は、全国の教育センター・研究会・大学附属校・教科書会社の指導案や実践記録を20件あまり集めて、「面白い導入」と「L字型の面積を考える手立て」を並べたものです。どれが正解、という話ではありません。「こう考えたら、この授業はもっと面白くなるかも」というヒントとして、気になったものをつまみ食いしてもらえたらと思います。

01この単元の勘どころ

「直接くらべ → 数えてくらべ → 単位でくらべ」を、子どもにたどらせる

面積は、直接比較 → 任意単位 → 普遍単位の順でたどるのが定石です。まず2つの形を重ねてくらべる(直接比較)。重ねられない形が出てくると、マスやタイルが「いくつ分」かで数える(任意単位)。すると今度は、人によってマスの大きさがちがって話がかみ合わない。ここで「みんな同じ大きさの単位がほしい」という必要感が生まれ、1辺1cmの正方形=1㎠が登場します。この「必要感」を飛ばして公式から入ると、面積が"意味のない計算"になりがちです。

三原市の谷川真那美さんの単元構想は、レディネステストの結果から入っています。直接比較(重ねてくらべる)はできる子が多い(正答率83%)のに、「タイルやマス目が幾つ分あるか」で比べる問題は正答率39%。多くの子が、数えずに「広そうな方」を見た目で選んでいた、と。だからこの単元は「見た目で広さを決めない。数で決める」への転換が山場になります。 出典:三原市 谷川真那美「陣取りゲーム〜あなたの島の面積は?」第4学年 単元構想(PDF)

もう一つの勘どころが、「広さ」と「まわりの長さ」の混同です。まわりの長さが同じでも面積はちがう。面積が同じでもまわりの長さはちがう。ここは大人でも直感を裏切られる所で、あえてぶつけると深い学びの入口になります(後述)。

02面白い導入くらべ

数えたくなる仕掛け・ゲーム・大きな問い・生活

導入のねらいは2つ。「数えて比べたい」という必要感を持たせることと、「見た目ではっきり決まらない」状態をつくることです。先行事例を4つのタイプに分けて並べました。◎は個人的に「これは面白い」と感じたものです。

タイプ1|ゲームで"数える必要感"をつくる

おすすめ導入ネタ面白さのツボ出典
◎陣取りゲーム方眼をじゃんけんで取り合い、自分の「島」をつくる→「どっちが広い?」。斜めや飛び地で見た目では決まらないので、「マスを数えよう」が子どもから出る。導入がそのまま任意単位(1マスいくつ分)の学びになる。三原市/みんなの教育技術
○陣取りの"引き分け"を作るわざと同じマス数だが形がちがう島にして「引き分け」を体験させる。形がちがっても広さは同じ、に気づく(保存性)。ロイロノート 尾駮小 実践
みんなの教育技術の指導アイデアは、陣取りゲームで「広さは"正方形のいくつ分"で比べられる」を押さえるところをねらいにしています。3年生で長さを「直接・間接・任意単位」で比べた経験を、そのまま二次元(広さ)に広げる流れです。ゲームで盛り上がった熱を、そのまま「数える」動機に変えられるのが強みです。 出典:みんなの教育技術「小4算数『面積』指導アイデア《陣取りゲームで図形の広さを比較しよう》」

タイプ2|"重ねられない形"で行きづまらせる

おすすめ導入ネタ面白さのツボ出典
◎2つの部屋・花だんくらべ縦長と横長など、重ねてもはみ出す2枚を見せる。「どっちが広い?」→重ねる(直接比較)ではムリ→「マスにのせて数えよう」へ自然に進む。単位の必要感が一直線に出る。佐賀県教育センター/東京都研修センター
○新聞紙・タイルの敷き詰め机や床を新聞紙で敷き詰めて「何枚分」。手を動かすと、単位がバラバラだと比べられないと体で分かる。土佐の教育研究会 実践
○じん地とりの島を配って測らせる紙に描いた「島」を配り、任意単位→1㎠へ。測る活動が入るので実感が残る。各実践

タイプ3|単元を貫く「大きな問い」で入る

おすすめ導入ネタ面白さのツボ出典
◎「広さは、何で測る?」長さは cm・m で測れた。では広さは? と正面から問う。「マス(1㎠)で測る」に行き着く。長さの単位の学びと対にして単元を貫ける。東京書籍 単元リンク集ほか
○まわりの長さが同じ2つの形同じ長さのひもで作った長方形いろいろ→まわりは同じなのに広さがちがう。面積と周長の区別を、問いとして立てる。各実践

タイプ4|ICT・生活とつなぐ

03つまずきを越える手立て

「見た目でなく数で」「1㎠のいくつ分」「単位の大きさの実感」

面積のつまずきは、だいたい3つに集まります。先行事例の工夫を集めました。

三原市案の指導改善のねらいにこうあります。「形式的に公式を用いて面積を求めることを急がず、基準となる単位(1㎠)が"隙間なく何個並べられるか"、その個数の求め方として公式を導き出す」。公式は覚えるものではなく、数える手間をはぶく道具として立ち上げる、という発想です。 出典:三原市 谷川真那美「陣取りゲーム〜あなたの島の面積は?」単元構想(PDF)指導改善のねらい

04L字型・複合図形「考えが割れる」練り上げ

分ける・動かす・大きくして引く。そして「式を読む」

長方形の公式を学んだあとにやってくる、L字型(凸型)の面積。ここがこの単元いちばんの"練り上げどころ"です。公式がそのまま使えない形に出会わせると、子どもの考えがきれいに割れます。

みんなの教育技術の指導アイデアは、L字型で「構成する長方形・正方形に着目する」ことをねらいの中心に置いています。ばらばらに見える考え(分ける・動かす・引く)を、「知っている長方形の形になおしている」という一点で結ぶと、多様な考えが一つにまとまります。 出典:みんなの教育技術「小4算数『面積』指導アイデア《長方形を組み合わせた図形の面積の求め方》」

ここで効くのが、「式を読む」活動です。啓林館の実践「式をよむ力を育てる求積指導の工夫」は、答えや図を先に見せず、式だけを提示して「この式は、どう考えた式かな?」と読ませます。「6×5−3×3って、どういうこと?」を図に戻す。友だちの考えを、式から復元する。ここに、この単元の思考のうまみが詰まっています。

答えを出すより、「その式は、どう考えた式か」を読む。ここに、面積の面白さがある。 啓林館の実践「式をよむ力を育てる求積指導の工夫」より

05生活とつなぐネタ

まとめ・活用の引き出し
大きな単位は「数字だけ」だと丸暗記になりがちです。みんなの教育技術のアール・ヘクタールの指導アイデアも、身近な広さ(校庭・田畑)と結びつけて量感をもたせることをすすめています。「東京ドーム○個分」を ha に翻訳するだけでも、単位が生活の言葉になります。 出典:みんなの教育技術「小4算数『面積』指導アイデア《面積の単位『アール』『ヘクタール』『平方キロメートル』を知る》」

06「こう考えたら面白いかも」1時間プラン例

正解ではありません。先行事例から組んでみた、たたき台の1本です

ここまでのヒントを、L字型の面積を考える1時間(本時)に組んでみました。これが正解ではありません。「この形、公式が使えない」で立ち止まらせ、「分ける・動かす・引く」で考えを出させ、「式を読む」で練り上げる。1つの図形をめぐって、考えが行き交う流れです。

本時(L字型の面積の求め方・45分)— たたき台
つかむ
7分
L字型の「教室のゆか(でっぱりのある形)」を提示。「この形の面積、どうやって求める? 公式は使えるかな?」
見通し
5分
「長方形なら求められるのに…」→「知っている形になおせないかな?」と方向づけ。1㎠マスも配る。
自力解決
13分
分ける/動かす/大きくして引く/数える。図に線をかき、式にする。1人1つでなく、できたら2つ目の方法にも挑戦。
交流
13分
式だけを黒板に並べ、「この式はどう考えた式?」と読み合う。ちがう考えが「長方形になおす」で1つにまとまることを確かめる。
まとめ
7分
「複雑な形も、知っている長方形になおせば求められる」。ふりかえりに、自分が一番いいと思う方法とわけを書く。
刷って使える 本時 指導案(1時間) L字型で入る本時案。ねらい・展開・板書・評価まで。自作・A4印刷用。 刷って使える ワークシート L字型を「分ける・動かす・引く」で求め、式と図をつなぐ。自作・A4印刷用。
出典・参考にした先行事例

敬意を込めて。指導案の本文は転載せず、要約と自分の言葉でまとめました。くわしくは各リンクから原典にあたってください。
(各サイトの内容・リンクは執筆時点のものです。リンク切れの際はご容赦ください。)

指導案・単元構想(教育センター・研究会・自治体)

  1. 三原市 谷川真那美「陣取りゲーム〜あなたの島の面積は?」第4学年 単元構想|PDF ↗
  2. 東京都教職員研修センター 第4学年 算数科学習指導案「面積」|PDF ↗
  3. 佐賀県教育センター 第4学年 算数科学習指導案「面積(広さを調べよう)」(啓林館)|PDF ↗
  4. 土佐の教育研究会 第4学年「広さを調べよう」実践|PDF ↗
  5. 廿日市市立四季が丘小学校 第4学年 算数科学習指導案「面積」|PDF ↗
  6. 尾道市立高須小学校 第4学年 算数「広さの表し方を考えよう」|PDF ↗

研究・実践記録(教科書会社)

  1. 啓林館 私の実践・私の工夫「数学的な見方・考え方を働かせる授業 4年『面積』」|ページ ↗
  2. 啓林館 実践記録「式をよむ力を育てる求積指導の工夫」第4学年|ページ ↗
  3. 啓林館 実践記録 算数4年(面積)|ページ ↗
  4. 東京書籍 東書Eネット 教科書単元リンク集「面積のくらべ方と表し方」|ページ ↗

授業アイデア・記事・ICT・映像

  1. みんなの教育技術「面積の比べ方を考える」|記事 ↗
  2. みんなの教育技術「陣取りゲームで図形の広さを比較しよう」|記事 ↗
  3. みんなの教育技術「長方形を組み合わせた図形の面積の求め方」|記事 ↗
  4. みんなの教育技術「面積の単位『アール』『ヘクタール』『平方キロメートル』を知る」|記事 ↗
  5. みんなの教育技術「面積(単位の関係)」|記事 ↗
  6. ロイロノート 授業案 六ヶ所村立尾駮小 嘉瀬賢太郎「陣取りゲームから広さを比べる方法を考えよう」|ページ ↗
  7. EDUPEDIA「スモールステップで学ぶ『面積のくらべ方と表し方』」|ページ ↗
  8. eboard「面積」授業映像と問題ドリル一覧|ページ ↗

この記事の教材研究メモ(先行事例20件超の一覧)をもとに、School Stock が要約・再構成しました。図はすべて自作です。教科書の本文・図版、児童の情報は含んでいません。

School Stock は、現役の小学校教員がつくっている無料の教材と道具の棚です。「授業をこう考えたら面白いかも」を、これからも単元ごとにためていきます。研修や校内の学び合いで使ってもらえたら嬉しいです。→ このサイトについて
刷って使える →本時 指導案(1時間) 刷って使える →ワークシート ← もどる教材研究ノートの棚へ