「広い」って、どうやって決める?
小4算数「面積(広さを調べよう)」の授業を、全国の先行事例を歩きながら考えます。これは"正解の指導案"ではありません。「こう考えたら面白いかも」を集めた、授業づくりのヒント集です。
ここに並べた導入や手立ては、全国の先生・研究会・教育センター・大学附属校・教科書会社の方々が積み上げてこられた実践から学んだものです。参考にした実践には、本文中と末尾に必ず出典と元サイトへのリンクを付けました。指導案の文章をそのまま写すことはしていません(要約と、私自身の言葉で書いています)。敬意を込めて、リンクから原典にあたっていただけたら嬉しいです。
4年生の「面積」。子どもはもう、「広い・せまい」を毎日感じています。運動場は広い、下じきはせまい。ところが「どれだけ広いか」を数で言おうとすると、とたんに手が止まります。長さはものさしで測れる。では、広さは何で測るのか。この時間のいちばん面白いところは、「広さを数にする」その第一歩を、子ども自身にたどらせるところにあります。
この記事は、全国の教育センター・研究会・大学附属校・教科書会社の指導案や実践記録を20件あまり集めて、「面白い導入」と「L字型の面積を考える手立て」を並べたものです。どれが正解、という話ではありません。「こう考えたら、この授業はもっと面白くなるかも」というヒントとして、気になったものをつまみ食いしてもらえたらと思います。
01この単元の勘どころ
面積は、直接比較 → 任意単位 → 普遍単位の順でたどるのが定石です。まず2つの形を重ねてくらべる(直接比較)。重ねられない形が出てくると、マスやタイルが「いくつ分」かで数える(任意単位)。すると今度は、人によってマスの大きさがちがって話がかみ合わない。ここで「みんな同じ大きさの単位がほしい」という必要感が生まれ、1辺1cmの正方形=1㎠が登場します。この「必要感」を飛ばして公式から入ると、面積が"意味のない計算"になりがちです。
もう一つの勘どころが、「広さ」と「まわりの長さ」の混同です。まわりの長さが同じでも面積はちがう。面積が同じでもまわりの長さはちがう。ここは大人でも直感を裏切られる所で、あえてぶつけると深い学びの入口になります(後述)。
02面白い導入くらべ
導入のねらいは2つ。「数えて比べたい」という必要感を持たせることと、「見た目ではっきり決まらない」状態をつくることです。先行事例を4つのタイプに分けて並べました。◎は個人的に「これは面白い」と感じたものです。
タイプ1|ゲームで"数える必要感"をつくる
| おすすめ | 導入ネタ | 面白さのツボ | 出典 |
|---|---|---|---|
| ◎ | 陣取りゲーム | 方眼をじゃんけんで取り合い、自分の「島」をつくる→「どっちが広い?」。斜めや飛び地で見た目では決まらないので、「マスを数えよう」が子どもから出る。導入がそのまま任意単位(1マスいくつ分)の学びになる。 | 三原市/みんなの教育技術 |
| ○ | 陣取りの"引き分け"を作る | わざと同じマス数だが形がちがう島にして「引き分け」を体験させる。形がちがっても広さは同じ、に気づく(保存性)。 | ロイロノート 尾駮小 実践 |
タイプ2|"重ねられない形"で行きづまらせる
| おすすめ | 導入ネタ | 面白さのツボ | 出典 |
|---|---|---|---|
| ◎ | 2つの部屋・花だんくらべ | 縦長と横長など、重ねてもはみ出す2枚を見せる。「どっちが広い?」→重ねる(直接比較)ではムリ→「マスにのせて数えよう」へ自然に進む。単位の必要感が一直線に出る。 | 佐賀県教育センター/東京都研修センター |
| ○ | 新聞紙・タイルの敷き詰め | 机や床を新聞紙で敷き詰めて「何枚分」。手を動かすと、単位がバラバラだと比べられないと体で分かる。 | 土佐の教育研究会 実践 |
| ○ | じん地とりの島を配って測らせる | 紙に描いた「島」を配り、任意単位→1㎠へ。測る活動が入るので実感が残る。 | 各実践 |
タイプ3|単元を貫く「大きな問い」で入る
| おすすめ | 導入ネタ | 面白さのツボ | 出典 |
|---|---|---|---|
| ◎ | 「広さは、何で測る?」 | 長さは cm・m で測れた。では広さは? と正面から問う。「マス(1㎠)で測る」に行き着く。長さの単位の学びと対にして単元を貫ける。 | 東京書籍 単元リンク集ほか |
| ○ | まわりの長さが同じ2つの形 | 同じ長さのひもで作った長方形いろいろ→まわりは同じなのに広さがちがう。面積と周長の区別を、問いとして立てる。 | 各実践 |
タイプ4|ICT・生活とつなぐ
- ロイロノートで陣取り。方眼カードを配り、取ったマスを塗る→提出箱で全員の島を並べて比べる。数え方の交流がしやすい。(ロイロノート 尾駮小 嘉瀬賢太郎さんの授業案)
- 授業映像・ドリルで反転/個別最適。導入だけ動画で予習、授業は数える活動と交流に集中させる使い方も。(eboard「面積」映像)
- 身のまわりを測る。教室・机・下じきを、1㎠や1㎡でおよそ何個分か見積もる。数値化のよさを実感に落とす。
03つまずきを越える手立て
面積のつまずきは、だいたい3つに集まります。先行事例の工夫を集めました。
- 「まわりの長さ」との混同。広さを聞いているのに周りをなぞって数える子がいる。マスを一つずつ塗って数える活動を最初に必ず通し、「広さ=中がマスいくつ分」を体で押さえる。
- 公式を"暗記"にしない。三原市案は、公式を急がず「1㎠がすき間なく何個並ぶか、その個数の求め方」として、たて×よこの公式を子どもから引き出しています。「たて4・よこ5なら、1列に5個が4列で4×5=20個」。公式が"数える近道"だと分かる。
- 単位変換の実感(1㎡=10000㎠)。数字だけだと丸暗記になる。新聞紙や模造紙で1㎡を実際に作り、1辺100cmの正方形=100×100=10000㎠を目で見る。1a・1haも「10m四方」「100m四方」を運動場で歩幅で確かめると残る。
04L字型・複合図形「考えが割れる」練り上げ
長方形の公式を学んだあとにやってくる、L字型(凸型)の面積。ここがこの単元いちばんの"練り上げどころ"です。公式がそのまま使えない形に出会わせると、子どもの考えがきれいに割れます。
- 分ける。たて線を1本引いて2つの長方形に。それぞれ求めてたす。(例:3×5+3×2=21)
- 動かす(等積変形)。下の出っぱりを切って上に動かすと、たて長の長方形1つになる。(例:3×7=21)
- 大きくして引く。欠けを埋めて大きな長方形にし、埋めた分を引く。(例:6×5−3×3=21)
- 数える。1㎠を全部数える。時間はかかるが、他の考えの答え合わせになり、全員が土俵に乗れる。
ここで効くのが、「式を読む」活動です。啓林館の実践「式をよむ力を育てる求積指導の工夫」は、答えや図を先に見せず、式だけを提示して「この式は、どう考えた式かな?」と読ませます。「6×5−3×3って、どういうこと?」を図に戻す。友だちの考えを、式から復元する。ここに、この単元の思考のうまみが詰まっています。
答えを出すより、「その式は、どう考えた式か」を読む。ここに、面積の面白さがある。啓林館の実践「式をよむ力を育てる求積指導の工夫」より
05生活とつなぐネタ
- 教室のゆかは、およそ何㎡?(学校の教室は約64㎡=8m×8mが目安)
- 1㎡は、たたみ約0.6枚分(京間・江戸間で差はある)。たたみ何枚分で部屋の広さを言う文化とつなぐ。
- 田や畑の広さは a(アール)・ha(ヘクタール)で表す。1a=10m四方、1ha=100m四方。
- 東京ドーム何個分。東京ドームの建築面積は約4.7ha。ニュースでよく聞く「東京ドーム○個分」が、haで言い直せる。
- 市や県の広さは ㎢(平方キロメートル)。地図帳の面積の数字とつなぐ。
06「こう考えたら面白いかも」1時間プラン例
ここまでのヒントを、L字型の面積を考える1時間(本時)に組んでみました。これが正解ではありません。「この形、公式が使えない」で立ち止まらせ、「分ける・動かす・引く」で考えを出させ、「式を読む」で練り上げる。1つの図形をめぐって、考えが行き交う流れです。
7分
5分
13分
13分
7分
敬意を込めて。指導案の本文は転載せず、要約と自分の言葉でまとめました。くわしくは各リンクから原典にあたってください。
(各サイトの内容・リンクは執筆時点のものです。リンク切れの際はご容赦ください。)
指導案・単元構想(教育センター・研究会・自治体)
- 三原市 谷川真那美「陣取りゲーム〜あなたの島の面積は?」第4学年 単元構想|PDF ↗
- 東京都教職員研修センター 第4学年 算数科学習指導案「面積」|PDF ↗
- 佐賀県教育センター 第4学年 算数科学習指導案「面積(広さを調べよう)」(啓林館)|PDF ↗
- 土佐の教育研究会 第4学年「広さを調べよう」実践|PDF ↗
- 廿日市市立四季が丘小学校 第4学年 算数科学習指導案「面積」|PDF ↗
- 尾道市立高須小学校 第4学年 算数「広さの表し方を考えよう」|PDF ↗
研究・実践記録(教科書会社)
- 啓林館 私の実践・私の工夫「数学的な見方・考え方を働かせる授業 4年『面積』」|ページ ↗
- 啓林館 実践記録「式をよむ力を育てる求積指導の工夫」第4学年|ページ ↗
- 啓林館 実践記録 算数4年(面積)|ページ ↗
- 東京書籍 東書Eネット 教科書単元リンク集「面積のくらべ方と表し方」|ページ ↗
授業アイデア・記事・ICT・映像
この記事の教材研究メモ(先行事例20件超の一覧)をもとに、School Stock が要約・再構成しました。図はすべて自作です。教科書の本文・図版、児童の情報は含んでいません。